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第2回 「源平寿し」
今週は大井町の「源平寿し」を訪問。
いまから十数年前、大井町の近所に住んでいた頃にはちょくちょく顔を出していたが、引っ越してからはめっきりご無沙汰していた。
あの頃は「安さが魅力のごく普通の回転寿司屋」というイメージであったが、果たしていまはどうなっているか…。
大井町の駅前商店街をてくてくと歩いていくとほどなく
「源平寿し」に行き当たる。
当時とあまり変わらぬ佇まい。いや年月分は十分に老いている。
あやしげな古寿司屋、といった風情で、一見ではなかなか入りにくい。
これが回転寿司屋でなかったら、まず敬遠したくなる感じの店だ。
いや…回転寿司屋としても十分に怪しい。
そもそも
回転寿司屋というのは、気軽に入れるところが良いのであるが、これでは普通の寿司屋と変わらない。気の弱い客やおんなこどもを寄せ付けない雰囲気だ。
看板には
「くるくる廻る江戸前鮨」と書いてあるが、だからどうしたなんなんだ!といった感じなのである。
店に入る。
「いらっしゃい」との声が板前さんよりかかるが、なんだかかわいそうなくらいに元気がない…
病気の板前さんが無理矢理絞り出したような声だ。
愛想はあるんだが、致命的に元気がない、といった感じなのである。
人柄は良さそうな感じなのが救いか。
昼時とあって、客は数組いた。
皿は……廻っていない……
普通の回転寿司屋でもアイドルタイムや客が少ないときなどは皿を廻さずに注文で握る店もあるが、そういうのとはあきらかに違う。
古びたレーンを見ているともうえらく長い間、レーンが廻っていないであろうことが手に取るようにわかる。
確かにかつて、この店ではレーンが廻っていた。
私が訪れていた頃は、くるくると皿が廻っていた。
が、どうにも違和感がつきまとっていた。
つまり、なぜ廻しているのかが不思議な店、だったのである。
もともと普通の寿司屋だったのかもしれない。なんだかレーンが無理矢理設えたといった感じだったのである。
レーンはカウンターの端から端まで行くと急角度で曲がっている。レーンとレーンの間はわずかに20センチほどである。客席は片側一車線で、板場とカウンターのわずかな間にレーンが横たわっているといった案配だ。
だが、いまはもう廻っていない。
じゃ、普通の街の古びた寿司屋と同じじゃないか、とあなたは言うかもしれない。
その通りなんである。
しかし、注文すると寿司はなぜか皿にのせられて出てくる。
「ムムム…」と思う。
このシステムは間違いなく回転寿司だ。
そもそも回転寿司の良いところというのは、自分が食べようとしている寿司がいったいいくらなのか一目でわかるところにある。
すごい美味そうな中トロだが値段は高い…食べるべきかやめるべきか、それが問題だ、とハムレット的な苦悩に陥るのがそれはそれで楽しいもんである。
が、廻っていなければ回転寿司の愉しみを味わうことは出来ない。
さらに気弱な方はこういう雰囲気の中では注文できないかもしれない。
それでは回転寿司屋としての意味がないじゃないか、とあなたは言うかもしれない。
が、そうでもないんである。
寿司の値段がなんともいえぬ、回転寿司価格なわけだ。
マグロ、タコ、イカなどベーシックなネタは概ね110円。
大トロや活ネタなどの上ネタが300円と激安といっていいくらいの値段設定だ。
しかも、味は悪くない…。
いや、激安回転寿司だと思えば十分に美味い。
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ランチセット 390円 |
マグロ 110円 |
めかぶ 110円 |
ここでふたたびハタと思うわけだ。
果たしてここは回転寿司屋なのか否なのか…
例えば、廻らなくなった回転寿司屋の中でもメジャーな「すし台所家 東急文化村店」は、一応、回転寿司屋といわれている。いや、かつては廻っていたがいまは廻すことをやめてしまった回転寿司屋といった方がよいだろう。
廻さなくなった最大の理由は、食材のロスを出したくない、ってなことなのだと思うが、それよりなにより、廻すことに意味がない、ってなことなのだろう。
つまり、訪れる客は回転寿司テイストを求めていない、以前と同じ常連ばかり。回転寿司にしたら新規のファミリー層なんかが来るのかと思ったら、店の佇まいに恐れをなしてかやってこない…じゃ、廻すのやめようか、ってなもんであろう。すし台所家も然りか…。
もちろん、お会計も皿の色と数を計算する回転寿司システム。
廻っていないが、看板には回転寿司の表記。
廻っていないが、レーンはある。
廻っていないが、回転寿司システムのお会計。
廻っていないが、回転寿司価格…。
果たしてここは回転寿司屋なのか否か…
「いまでこそ
廻してはいないが、回転寿司の魂までは売り渡してないわい!」といった時代について行けずに乗り遅れた頑固職人のような魂を感じる。
これこそが回転寿司魂なのか?
気軽に入れない回転寿司屋
廻らない回転寿司屋
という新ジャンルな店というのもありなんじゃないかと思った次第です
今回の評価



「源平寿し」
住所:東京都品川区大井1-1-25
電話:03-3777-6264
営業時間:11:00〜22:00
定休日:木曜




